滋賀県医師協同組合 Shiga Medical Cooperative Association

滋賀県医師協同組合は、滋賀県の開業医のための組合です。

 
わたしは、20年ほど前に個人で土地を購入しましたが、遠方にあるため何の利用もせずに
遊休地として保有してきました。しかし、最近この土地の隣家の方からこの土地を譲ってほし いとの話を受けました。わたしも今後とくに利用する予定のない土地なので譲ることに抵抗はないのですが、税金のことが気になります。そこで、この土地を売却した場合の税金について簡単にご説明して下さい。
今年度の改正でもっとも関心が高く、改正点の多かった土地税制について取り上げてみたいと思います。
譲渡所得 譲渡損失

譲渡所得
譲渡所得とは、資産(土地、建物のような不動産の他、車両やゴルフ会員権なども含まれます。ただし、販売用のものは除きます)の譲渡(=売却)により生じた所得(=利益)をいい、今回のご質問にあるような土地等の不動産を譲渡した場合も当然、譲渡所得に該当します。ただ、今回のような土地等の不動産を譲渡したケースにおける所得税の課税方法は、他の所得(給与や不動産等)と合算する総合課税ではなく、下記の分離課税になります。
分離課税とは
分離課税とは、土地、建物等の不動産を譲渡した場合の所得税の課税方法で、他の所得(給与や不動産等)とは合算せずに分けて別々に課税されます。

①譲渡所得の算出方法

  
譲渡所得 = 譲渡収入 △ ( 取得費 + 譲渡費用 )

と聞き慣れない言葉ばかり並んでいますが、要は売った値段から買った値段とその他譲渡に際し要した費用(仲介手数料等)を控除して計算するというだけのことです。

分かり易いように、具体的な数値を入れてみましょう。

      譲渡収入  5,000万円   
得 費  3,000万円   譲渡費用  200万円

  1,800万円 = 5,000万円 △ ( 3,000万円 + 200万円 )

ここで算出された譲渡所得に税率を乗じて税額を算出するのですが、譲渡資産の所有期間の長短により適用される税率が異なります。

②譲渡所得の適用税率

分離課税による譲渡所得は、譲渡年の1月1日における対象土地、建物等の所有期間により、長期、短期に区別され、各々異なった税率が適用されます。具体的には、所有期間が5年を超えるか否かで判定します。今回のご質問の場合には、所有期間が5年を超えておりますので、長期ということになり、20%(所得税15%、住民税5%)の税率が適用されます。

  
1,800万円 × 20% = 360万円(所得税270万円、住民税90万円)
長期譲渡所得の100万円特別控除の廃止
平成15年までは、ご質問のケースにあるような分離長期の譲渡所得について、100万円が特別控除額として控除されていました。しかし、今回の改正により長期譲渡所得の100万円特別控除が廃止されました。

平成15年までの譲渡所得の算出方法は、

  
譲渡所得 = 譲渡収入 △ ( 取得費 + 譲渡費用 ) 100万円特別控除
                                       廃 止

今回のケースですと、20万円(100万円特別控除×20%)増税されたことになります。
分離長期の譲渡所得の適用税率の引下げ
平成15年までは、ご質問のケースにあるような分離長期の譲渡所得について適用される所得税率等は、26%(所得税20%、住民税6%)とされていましたが、今回の改正によりその税率が20%(所得税15%、住民税5%)に引き下げられました。

今回のケースですと、6%(108万円=1,800万円×6%)分減税されたことになります。

譲渡損失
譲渡損失とは、・・・といっても、これに関し明確な定義があるわけではありません。単に、でご説明した内容とはまったく逆で、譲渡(=売却)により損失が生じる場合を指します。要は、売った値段よりも買ったときの値段(譲渡に際し要した費用の額を含みます)の方が高いときに生じる損失のことをいい、この点に関し、平成16年度税制改正において大きな改正がありました。
損益通算の禁止
平成16年度改正前の所得税法においては、下記に掲げる一定の所得について 生じた損失について、他の黒字の所得金額と損益の相殺(通算)をすることができまし た。しかし、それが今回の改正により上記一定の所得のうち、土地、建物等の譲渡によ り生じた損失については、他の所得と通算することができなくなりました(注1)。

(注1)居住用不動産の譲渡損失のうち、一定の要件を満たすものを除きます。以下
において同じ。
損益通算とは

損益通算とは、所得税の確定申告において、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡 所得について生じた損失(注2)を他の黒字の所得金額と相殺(通算)することをいいます。 以下、今回の改正点も踏まえて具体的な例をあげてご説明します。

 個人Aさんの場合
    (譲渡所得については、事業用の土地の譲渡により生じた損失とします)

     不動産所得  300万円    事業所得   700万円    譲渡所得  
△800万円

改正前
       200万円(差引所得金額) = 300万円 + 700万円 △ 800万円

改正後
       1,000万円(差引所得金額) = 300万円 +
700万円

土地、建物等の譲渡により生じた損失については、他の黒字の所得金額と通算できなくなりました。

(注2)譲渡所得について生じた損失であっても、損益通算することができないものもありますので注意が必要です。たとえば、別荘などの通常の生活に必要のないものの譲渡により生じた損失がそうですが、その他にも対象とならないものがありますので、実際の適用に当たっては、税理士等の専門家への事前のご相談をお勧め致します。

以下、譲渡内通算についてご説明します。こちらは、上記“譲渡損失の損益通算”とは異なりますが、関連性が高いことと改正がありましたので併せてご説明します。

譲渡内通算
改正前の譲渡所得計算においては、1年間に複数の譲渡があった場合、まず譲渡所得 内において損益を通算(これを「譲渡内通算」といいます)することができました。しかし、それが今回の改正により土地、建物等の譲渡により生じた損失については、他の 土地、建物等の譲渡により生じた所得以外と通算することができなくなりました。以下、 具体的な例をあげてご説明します。

 個人Bさんの場合
   (譲渡所得(甲)は事業用車両の譲渡により生じた所得で、譲渡所得(乙)は、事業用の土地の譲渡に
    より生じた損失とします)

             譲渡所得
   900万円      譲渡所得   △600万円

改正前
       300万円(譲渡所得) =900万円 △
600万円

改正後
       900万円(譲渡所得)

土地、建物等の譲渡により生じた損失については、他の土地、建物等の譲渡により生じた黒字の所得金額以外と譲渡所得内においても通算することができなくなりましたので、譲渡所得
は損益を通算することができません。また、譲渡所得 の損失金額は翌年以降に繰り越して通算されることもなく、切り捨てられることになりました。

以上、今回のご質問の場合においては、駐車場用地の売却により損失が生じる見込みとのことですので、他の黒字の所得が生じる土地、建物等の譲渡がなければ、損失金額が切り捨てられるだけとなります。そこで、緊急の資金需要がある場合を除き、他の黒字の所得が生じる土地、建物等と併せて譲渡し、譲渡内通算の利用をご検討される方がよろしいのではないかと思われます。
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