滋賀県医師協同組合 Shiga Medical Cooperative Association

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今回の税制改正で2500万円までの贈与が非課税になる制度ができたと聞きました。ちょっと気になりますので、その詳細についてご説明下さい。
ご質問の制度は、相続税法に新たに設けられた相続時精算課税というものです。この制度は、新たに設けられた規定であること、および注目度の高い規定でもあることからその概要 はついて、利用に際しての注意点とちょっとしたコツについて触れていきたい思います。
相続時精算課税の概要について 設例
選択のポイントと注意点 住宅取得資金の贈与を受けた場合

では、以下制度の内容等について簡単に説明した後、具体的な事例を用いて解説します。
相続時精算課税の概要について
趣旨
次世代への資産移転の円滑化を促進し、経済の活性化に資する(注1)

(注1)一般的に、資金(資産)について余裕はあるが需要のない年配層から逆に需要は あるが余裕のない若年層へ贈与を行い、資金(資産)の有効活用を促し、経済の活性化 に資することを目的として制定されたものです。
内容
従来からの方法(暦年単位課税で年間110万円の基礎控除を利用する方法)とは別に選択により、生前贈与について一定額までの非課税枠とそれを超える贈与について軽減税率を適用し、相続発生時に相続税・贈与税を精算、一体化する制度
適用要件および対象者
65歳以上の親から20歳以上の子である推定相続人(代襲相続人含む)への生前贈与
適用対象財産
贈与財産について種類、金額の制限なし
非課税枠
贈与者ごと2500万円まで非課税(贈与が複数回にわたる場合には、その合計金額が2500万円に達するまで。ただし、この非課税枠は恒久的なものではなく、贈与者の死亡時には贈与財産を相続財産に足戻し、相続税と精算しなければなりません。下記  2  参照)
適用税率
2500万円の非課税枠を超える部分については、一律20%の税率を適用

設例
下記のような家族構成で、Aは甲からの贈与につき相続時精算課税制度を選択しているが、Bは甲からの贈与について同制度の選択をしていない
 
(父:70歳)======== (母:63歳)
 (子:35歳)                  (子:30歳)
ケース1
平成15年6月 に別荘1000万円、には現金1000万円を贈与した

との間で相続時精算課税制度を選択していますので、からの2500万円までの贈与につい ては課税されません。したがって、1000万円の別荘を贈与されたとしても、この時点ではからの贈与について贈与税は課税されません。しかし、との間で同制度を選択していませんので、通常の贈与税(年間で110万円まで非課税)が課されます。

平成15年8月 
に現金110万円を贈与した

贈与税
 
:1000万円≦2500万円 ∴非課税枠以下のため、納税額なし
                           (非課税枠残高 1500万円)

←今回の贈与は、精算課税制度による非課税枠(2500万円)以下の贈与であるため課税されませんが、贈与税の申告は必要ですのでご注意下さい。

 
:{1000万円+110万円 △110万円(基礎控除)}×40%(贈与税率) =400万円

およびからの贈与について相続時精算課税制度の選択をしていないため、通常の贈与税計算)

は同年からも贈与を受けていますので、から受けた贈与と合わせて、その年中の受贈財産につ いて通常の贈与税計算をすることになります。

           平成16年6月 に土地2000万円、に現金110万円を贈与した
           平成16年9月 に株式200万円を贈与した

贈与税 
:{2000万円△(2500万円△1000万円)}×20%=100万円
                           非課税枠超過額については一律税率20%を適用
                                           (非課税枠残高 0円)

←精算課税制度を選択した
からの贈与が非課税枠の2500万円を超えたため、その超えた部分につ いては、一律20%の税率で贈与税が課されます。以後、からの贈与にいてはが亡くなるまで20% の税率で贈与税が課税されます。からの贈与について、110万円の基礎控除は使えません。

(200万円△110万円)×10%=9万円(
からの贈与分)

からの贈与については相続時精算課税制度の選択をしていないため、通常の贈与税計算)

←精算課税を選択している
からの贈与と選択していないからの贈与では、計算方法が異なるため、同年中の贈与であっても贈与者ごとに別々に計算します。

 
:110万円 △110万円(基礎控除)=0円

                平成20年6月 死亡により相続発生
 
相続財産に足し戻される財産価額 (相続発生時まで上記以外に
からの贈与はない)

 :1000万円(平成15年)+2000万円(平成16年)=3000万円

この制度を利用した場合の2500万円という非課税枠は、恒久的な非課税枠ではなく、贈与者の死亡時には贈与財産を相続財産に足戻し、相続税と精算しなければならず、贈与時の一時的なものに過ぎません。ただし、上記贈与に際し既に支払っている贈与税100万円は、今回課税される相続税から控除され、控除しきれないときは還付されます。

 
:相続開始前3年以内の贈与(注2)はないため、0円

(注2)詳細については、PART1を参照

←相続税法では、相続開始前3年以内の贈与財産に限り相続財産に足戻し計算しなければなりません。しかし、精算課税制度を選択した者については、その対象となる贈与者が死亡した場合、同制度を選択した以後のその者からの贈与財産のすべてを各々の贈与時の価額で足戻し計算しなければなりま せん。したがって、Aについては、相続開始前3年に限らず、精算課税適用以後の受贈財産すべてについて足戻しますが、
については、同制度を選択しておらず、なおかつ甲からの相続開始前3年以内の贈与はないため、今回の相続で足戻すべき財産はないことになります。  

選択のポイントと注意点

精算課税制度を選択すべき者は・・・?
相続税がかからない者
上記でお話したように、この制度は生前贈与を促す制度であって、相続発生時には贈与財産の持戻し計算することからもお気づきのように、相続税の負担が軽減されるようなものではありません。しかし、そもそも相続税がかからない者がこの制度を選択すれば、相続税はもちろん、贈与税の負担もあまり気にせず、早期に多額の資産を贈与することができます。
相続税の税率が20%以下の者
この制度を選択し、2500万円を超える贈与をした場合には、その超える部分の金額に対しては、一律20%の税率で贈与税が課税されます。しかし、もともと相続税がかかる者であっても、相続税の実効税率が20%以下の者であれば、先に贈与税として払うか、 後で相続税として払うかだけの違いで、税額の差異はさほどありませんので、早期に多額の資産を贈与することができます。
相続財産に足し戻される財産の価額は贈与時の価額
相続発生時に足し戻される贈与財産の価額は、贈与時の価額と規定されています。
したがって、将来的に値上がりしそうなものの贈与は後の相続税対策として有効ですが、逆に値下がりしそうなものについての贈与は一考の余地があります。
贈与者が異なる場合には、従来の方法を併用(他の贈与財産と区分して把握)
これについては、前回までの設例にもありましたが、この制度は65歳以上の父母から20 歳以上の子に対して、贈与者(つまり父母)の異なるごとに選択ができます。したがっ て、設例にもあったように父からの贈与についてはこの制度を選択し、母からの贈与についてはこの制度を選択しないということができます。その場合には選択した者からの贈与については、2500万円までの非課税枠を利用した贈与税額計算を行い、選択しなかった者からの贈与については、従来からの暦年課税で110万円までの非課税による贈与税の計算方法で税額を計算することになります。
両者からの贈与についてこの制度を選択し合わせて5000万円までの非課税枠を作ることもできます。要は、後の相続 を睨んでこの制度を選択するか否かを判断する必要があるということです。
贈与者の相続開始(死亡)時まで適用、従来の方法への変更不可
これもこの制度を適用した場合に特有の条件ですが、一旦この制度を選択した親子の間では、従来の方法(暦年課税で110万円まで非課税)による贈与税の計算方法 は利用できず、贈与者の相続開始(死亡)時までこの制度を適用しなければなりません。
したがって、選択にあたっては充分な思慮が必要です。
適用初年度の贈与税の申告書の添付が必要
この制度による贈与は、2500万円まで非課税だからといって何の手続きも必要な いということではありません。何の意思表示もしなければ、課税庁側にはこの制度を選 択したかどうか伝わりません。したがって、選択の意思表示として、適用初年度に税務署 長に対し、この制度を選択する旨の届出が必要となります。
年齢の判定は、贈与年の1月1日現在の年齢
この制度を選択できる条件のひとつに、贈与者である父母の年齢(65歳)と受贈者である子の年齢(20歳)がありますが、この年齢は贈与年の1月1日現在の年齢で判定します。
平成15年1月1日以後の相続・贈与から適用
この制度は、平成15年1月1日以後の相続・贈与から適用されます
基礎控除額110万円は、贈与者ごとではなく、受贈者1人での限度額
精算課税とは関係ありませんが、従来の暦年課税方式での贈与税額計算における年間110万円までの非課税枠(基礎控除)は、贈与者一人当たりではなく、受贈者一人で年間110万円までの非課税枠であることに注意して下さい。
基礎控除額以下の贈与については証拠資料を残すべき(注2)
これも今回の精算課税とは関係ありませんが、従来の暦年課税方式での贈与で、年間110万円までの贈与をされている方をよく見かけますが、これを申告が不要だからという 理由だけでしている方がいらっしゃったらご注意下さい。気になる方は、下記(注2)拙稿をご覧下さい。

(注2)
詳細については、PART1を参照

住宅取得資金の贈与を受けた場合
趣旨

親から子への住宅取得資金の贈与を活発化させ、住宅投資を促進させるため、相続時精算課税方式の下、従来の住宅取得資金の贈与(注1)とは別に非課税枠を拡充して設定 されました。

(注1)従来からある住宅取得資金の贈与についても、住宅投資の促進という趣旨は同じですが、対象者や非課税枠等の適用要件および計算方法(計算方法については複雑および紙幅の都合上、割愛。詳しくは税理士等の専門家へご相談下さい)が今回の相続時精算課税制度に関するものと大きく異なります。
そこで、今回の制度と対比しやすいよう今回 の住宅取得資金贈与の適用要件等の項目に注書き(注2~3)で従来の住宅取得資金贈与の適用要件を付け加えておきましたので、今回のものと比較しながらご覧下さい。

適用要件
平成15年1月1日~平成17年12月31日までの間に相続時精算課税制度を選択し、住宅取得資金の贈与を受けた場合、上記相続時精算課税制度の2500万円の非課税枠の他、上乗せで1000万円の住宅取得資金特別控除額を控除できる。
適用対象者および対象財産
親(年齢規定なし)から20歳以上の子である推定相続人(代襲相続人含む)への住宅取得資金の贈与

(注2)従来の住宅取得資金贈与の適用対象者(対象財産は同じ)・・・贈与者は父母の他、祖父母も含まれ、年齢制限はありませんが、受贈者の年間所得が1200万円以下そ の他の制限があります。
非課税枠
各贈与者ごとに上記2500万円の非課税枠のほか、上乗せで1000万円の住宅取得資金特別控除額を控除できる

(注3)従来の住宅取得資金贈与の非課税枠の金額(受贈者合計)・・・550万円
(ただし、この制度の適用対象上限金額は、受贈者合計1500万円)
例示
上記の設例による家族構成で、A、Bともに乙からの贈与につき相続時精算課税制度を選択し、下記のような贈与を受けた場合
平成15年8月 に 住宅取得資金として現金800万円、
            
にも同様に住宅取得資金として現金800万円を贈与した

 贈与税 
: 800万円≦3500万円 ∴非課税枠以下のため、納税額なし
                            (非課税枠残高  ? 円)

      
:800万円≦3500万円 ∴非課税枠以下のため、納税額なし
                            (非課税枠残高  ? 円)

平成16年5月 
に 株式2700万円、
            
にはさらに住宅取得資金として現金2700万円を贈与した

 贈与税 
:(2700万円 △ 2500万円) ×20% =40万円 
                  ∴非課税枠超過額については一律税率20%を適用
                   住宅取得資金専用の非課税枠残高200万円(注4)

(注4)非課税枠残高200万円は住宅取得資金専用のため、それ以外の贈与では控除することができません。ただし、再度、住宅取得資金の贈与に対しては控除することができます。

      
:2700万円≦3500万円 △800万円 ∴非課税枠以下のため、納税額なし
                           非課税枠残高  0 円
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