滋賀県医師協同組合 Shiga Medical Cooperative Association

滋賀県医師協同組合は、滋賀県の開業医のための組合です。



さきの税制改正により贈与税の基礎控除額が大幅に拡大されたと聞きました。そこでわたしはこの贈与税の基礎控除を使って、毎年子や孫に自分の財産を贈与していこうと考えてい ます。この場合、何か注意点のようなものはありますか?
ご存じの通り、平成13年度の税制改正により贈与税の基礎控除額がそれまでの受贈者一人あたり年60万円から年110万円に大幅に増額されました。そこで、この拡大された基礎控除額を利用してご質問者のように毎年贈与をしていこうとお考えの方も多いと思います。
そこでまず、今回はこの基礎控除を利用する際の注意点を、次にこれを利用した節税のポイントを順にご説明します。
贈与の有無の検証性! 連年贈与の危険性
効率的な贈与の仕方    

贈与の有無の検証性!
贈与税がかかるのは?
受贈者(贈与を受けた者)が、暦年中に受けた贈与財産の価格の合計額が基礎控除額(110万円)を超える場合、その受贈者につき、贈与税の納税義務が発生します。
贈与税は相続税の補完税!?
贈与税は、そもそも財産所有者が生前に自らの財産を贈与により移転してしまい相続税の課税を免れることを防止するために設け られた相続税の補完税としての役割をもっています。
生前贈与加算の適用はある
したがって、本来ならば同一人から生前に贈与された財産はすべて、その者の相続税の計算上、相続財産として足し戻し、相続税の課税がなされるべきですが、課税技術上、相続開始前3年以内の贈与財産に限り足戻し計算を行う下記の規定が設けられています。

生前贈与加算

相続開始前3年以内に(今回の相続に係る)被相続人から贈与を受けていた場合、その贈与財産を相続税の課税価格に足し戻し、相続財産として計算し直すことをいいます。
 

注)足し戻される贈与財産は、過年度の贈与税の申告の有無を問いません 。
(基礎控除以下の贈与であっても足し戻します)。なお、足し戻された贈与に係る贈与税については、今回の相続に係る相続税から控除されます。
財産贈与の検証可能性の確保?
ここで本題に戻ります。ご質問のように毎年基礎控除額以下の贈与を行う(=しか行わない)となると、毎年の贈与につき受贈者は、同一年に他から何も贈与を受けていないとすると申告の義務はありません。というより、しようにも出来ません。

つまり、何を言わんとしているのかと申しますと、財産所有者(贈与者)から受贈者に対し贈与がなされたとしても、贈与税の申告がないと贈与の有無を立証し難いことになるということです。

もちろん、相続開始前3年以内の贈与でしたら、申告の有無を問わず生前贈与加算の規定により相続財産に足し戻されるのですがそれより前の贈与についてはどうでしょうか?

以下のようなことも考えられますね?

毎年、贈与税の基礎控除額以下の金額で自らの財産を子や孫に贈与をしていた者が亡くなり、その者について相続が発生し、その後、その相続税にかかる税務調査があった場合

生前贈与加算適用外(相続開始前3年超)の贈与につき、贈与の有無を疑問視された
                                           ・・・相続財産の計上もれ!?

そこで、基礎控除額以下の贈与に限りませんが、贈与については主に下記のような点に注意する必要があります。
 
(イ) 基礎控除額を超える金額の贈与をし、申告による贈与の有無の検証性を確保する
(ただし、これについては連年贈与の危険性(次回)及び相続税と贈与税の税率の違いを利用した節税対策(次々回)との兼ね合いもあるため安易な利用は避けた方がいいでしょう)
(ロ) 贈与は、そもそも贈与者と受贈者との合意によりなされるものであることから、互いに贈与契約書を交わし保管する
(ハ) 金銭であれば、振込等、贈与財産が移転された事実を残しておく

連年贈与の危険性~安易な贈与は危険です!~
連年贈与とは?
読んで字のごとく、毎年贈与をすることです。これ自体、税法上の用語でも何でもありません。したがって、このことばにもはっきりとした定義があるわけではありません。ここでは、毎年、同一人に贈与することと考えて下さい。
毎年一定額の贈与が要注意!
連年贈与は、それ自体、とくに問題があるわけではありません。
したがって、毎年贈与しているからといって、即問題があるとは限りません。

では、どのような場合に問題となるのでしょうか?それは次のような場合です。

毎年特定の者に一定額の贈与をする場合、当初から特定の金額の贈与をするつもりがあったのではないか?
という疑問が生じるような贈与をした場合に問題となります。ちょっと分かりにくいでしょうから、具体的な例を挙げてご説明しましょう。

 資力のない子Aにその子の親Bが毎年60万円贈与し、その子Aがその資金を基に自ら(A)が契約者となり生命保険契約(10年満期の養老保険)を結んでいた場合


      保険契約者  ・・・ 子A
     被保険者    ・・・ 子A
     保険金受取人 ・・・ 子A

この贈与には重大な問題があります。

定期金の評価
 
このケースで問題となるのは次の点です。
 
養老保険などのように満期のある保険契約は、そもそも当初から10年分の保険料を贈与しようと思っていたのではないかという疑問が生じます。毎年の贈与が贈与税の基礎控除額以下であったとしても、資力のない子が保険料を払っていけるはずがありません(もちろん、途中で資力が生じた場合を除きます。)から、初めから10年分の保険料にあたる600万円を贈与しようとしていたと考えられるのです。この場合には、相続税法上、360万円(600万円の10年後の価値である60%で評価:これを相続税法上「定期金の評価」といいます。)として毎年分は基礎控除額以下であっても贈与税が課税される可能性があります。

これは余談ですが、以下のようなことがありました。

某都市に約500坪の土地(当時の時価で3億円)をお持ちの資産家(当時80歳)の方がおられました。この方もご多分に漏れずご自分のお子さんに毎年この土地を贈与されていました。それ自体はよくあることなのですが、その贈与というのが、聞いてびっくり。何と年間たったの60万円(当時の贈与税の基礎控除額=申告不要)分の土地を贈与されていたのです。ご相談を受けた際、この話を聞いて、「何百年かかんねん?」「贈与税はかからんでも、毎年の登記費用の方が無駄やがな」と思ってしまったのを今でもよく覚えています。このような場合には、当初金額が大きすぎて今回のような連年贈与の対象にはならないでしょう。というより、基礎控除額以下での3億円の連年贈与など常識では考 えられませんからね。
 

贈与について時期的に要注意なものがありますので、ついでにご紹介しましょう。
 
昨年から非常に話題に上ることの多いペイオフがこの4月から解禁になります。そこで、預金の一部を家族名義にして万一の金融機関の破綻に備えよう・・とお考えの向きも多いのではないでしょうか?しかし、これはひじょうに危険です。名義を借りた家族に対する贈与になり、贈与税が課税されるのは当然のこと(仮に、1,000万円の贈与ですと、2,605千円の税額になります)ですが、金融機関の破綻時に単なる名義貸し(=その名義を借りた家族のものではない)と認定されると保護の対象にならず、預金が没収されてしまう可能性もあります。贈与税を払えば、名義貸しではないという主張もできるでしょうが、この点については、まだ事例が出ていませんので断言は出来ませんが、避けられた方が無難でしょう。それに贈与税も高いですし、聞くところによると、このようなケースについては税務署も目を見張らせているとの噂もあります。あくまで噂です が・・・。


効率的な贈与の仕方
しくみは簡単
「効率的な贈与」と何やら大げさなタイトルがついていますが、しくみは簡単です。概要をお話しますと、相続税と贈与税の税率の差を利用して贈与をしてくことです。つまり、もし現時点で相続が発生した場合に適用されるであろう相続税率を把握し、それより低い贈与税率の範囲内で贈与をしていくことです。このようにしていけば、効率的に贈与していくことができます。では、以下具体的にお話しましょう。
まずは現状把握から始めます
相続税と贈与税の税率の差を利用するということですから、まずは相続税率を把握しなければなりません。
そのためには、現状での財産の把握を行うことになります。

以下、具体的な例を挙げてご説明しましょう。

 下記のような場合  (財産は相続税評価額(注)によるものとします)
 



親A(見込み被相続人)


土地   1億円
子B(見込み相続人) 建物   5千万円
子C(見込み相続人) その他  2千万円
相続人計 2人  財産計 1億7千万円

(注)現状の財産の相続税評価については、相続税の税率把握をするために必要なだけなので、それほど正確な評価は必要ではないと思います。ただし、 評価に不安がある場合には、税理士等の専門家にご相談されることをお勧め します。
次に、相続財産価額から相続税の基礎控除額を控除して現状での適用相続税率を把握しましょう
上記の でみると、
 
    
 相続財産     1億7千万円
      基礎控除額      7千万円 (=5千万円+1千万円×2人) 
                計   1億円

適用税率については、次のような手順で把握します。

一旦、上記遺産総額(1億円)を法定相続人(子B、C)が実際の取得割合とは別に各自の法定相続分(各1/2)どおりに遺産を取得したものとして分割した価額を下記の速算表に当てはめます。


   (現状での遺産総額)  (法定相続分)
       B、C  1億円  ×  1/2  = 5千万円       
                (下記速算表より∴適用税率25%)

 
相続税の速算表の一部抜粋
各法定相続人の取得金額(A) 税  率(B) 控 除 額(C)
800万円以下
1,600万円以下
3,000万円以下
5,000万円以下
    1億円以下

10%
15%
20%
25%
30%


40万円
120万円
270万円
520万円

 相続税=(A)×(B)-(C)
 
もうどのようにすればいいかお分かりですね?基礎控除などという辛気くさい方法を使うのではなく、現状把握によりいずれかかるであろう相続税率よりも低い贈与税率で毎年効率よく贈与していくのです。“贈与税率は高くて損だ”と単純に考えてしまうのではなく、遅かれ早かれ払わなければならないもの(税金)ならば、今の間に贈与税であっても、いずれかかるであろう相続税率よりも低い贈与税率で贈与した方が得だと分かります。ご参考までに、下記に贈与税の速算表の一部抜粋を載せておきます。
 
贈与税の速算表の一部抜粋
基礎控除等控除後の課税価格(A) 税  率(B) 控 除 額(C)
  150万円以下
  200万円以下
  250万円以下
  350万円以下

10%
15%
20%
25%


 7.5万円
17.5万円
  30万円

 贈与税=(A)×(B)-(C)
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